俺は恐怖に震える有美を支えながらやっとカフェを後にした。


でも本当は……
俺もどうにか歩ける程度だった。

借り物のワンピースは余計歩き辛くした。
裾が思ってた以上に広がらないのだ。

腰のあたりからふんわり広がり、裾の部分で狭まるデザイン。

確かに可愛い。
でも実用的ではなかった。

もしレギンスを履いていなかったらきっと最悪な状態になっていた事だろう。

でもこのスタイルにレギンスは合わない。
俺は密かに思ってはいた。


そんな事はアパートを出る時から解っていた筈なのに、有美の事に気を取られていたから見過ごしてしまっていたのだ。


ローヒールの靴だけは自分の足に合わせ選んだ。

だから歩き馴れている筈だった。

でも小幅で歩く事を余儀なくされた俺には、それすら妬ましく思えていた。


奥さんの形見のワンピースを破く訳にはいかない。
俺は精一杯内股で、ゆっくりと歩こうとはしていた。


でもそんな事より……
大切な、大切な幼なじみの千穂が……


俺とみずほの共通の友人だった千穂が、事件のキーマンだったなんて……

あんなに仲良しだったみずほの命を奪ったなんて……

俺はまだ悪夢の中にいた。