結論としては、持ってきた人間に聞くのが一番いいということで。

 ソウマなら、どこに置けばいいのか教えてくれそうな気がした。

 メイはダイニングを出て、階段の方へ向かおうとした―― 時。

「チクショー! 帰れ! バカヤロウ!」

 物凄い怒鳴り声が降ってきて、メイは身を竦めた。

 どうやら、部屋のドアのところで、2人言い争っているようだ。

 ソウマの声は穏やからしく、メイのところまでは聞こえない。

 相対しているカイトの怒鳴りは、とにかく罵声の嵐だった。
 一秒でも早く、ソウマを追い返そうとしているかのようだ。

 いま近付いてはいけない雰囲気に、階段の下でメイは身動きを止めた。

 ガチャリ。

 そういう時に限って、玄関のドアが開く。

 誰が来たのか分からずに、彼女はぱっと振り返った。
 ワインの瓶を抱えたまま。

 シュウだった。

 向こうも、帰ってくるなりメイと出会うとは思ってもいなかったらしく、怪訝そうに足を止める。

 が、そうしている間にも、2階の怒鳴りは続いているワケで。

「どうしたんで…ああ、ソウマが来てるんですか」

 何事かと聞こうと思っていたのだろうが、途中で気づいたらしく、シュウは眼鏡のずれを直した。

 視線が、メイの抱えているワインに向けられた後のことだった。

 こういう趣味があるのは、ソウマぐらいなのだろう。
 勿論、カイトがやりあってるという事実も考えての推理だろうが。

 しかし、彼女が何を答えられるワケでもなく、ただそこに立ちつくしていると、二階でドアがバターンと閉められる音がした。

 拒絶の音だ。

「やれやれ…」

 ソウマの声が聞こえてきたのは、階段を降り始める足音と同じ時だった。

 シュウとメイは、視線で彼を捕まえた。

「よぉ、帰ったのか」

 踊り場を回って、彼らに向かって片手を上げながらソウマが降りてくる。

「久しぶりですね…何をやったんです?」

 上の喧噪のことだろう。

 シュウも『やれやれ』という感じだ。