---麗華side

私が車止めに座って顔を膝に埋めていると、どこからともなく一人のさえない男がコンビニに向かって走ってきた。

視力はいいほうだからその男が彼ではないことくらいすぐに分かった。

男は私になんか気付いていないようで、息を切らしながらコンビニに飛び込んでいった。

でも、顔を見せてその男が彼の知り合いだったとしたらまたふりだしに戻ってしまう。

男がこの場を去るまで私は顔を埋めたままでいることにした。

男が何かを買ってコンビニから出てきたようだ。

このまま足音が遠くなればいい。

だが、何時までたっても男の足音が聞こえない、それどころか私の隣に立ったまま立ち止まっているらしい。

これは厄介な事になった。素直に顔を上げて彼にはいわないでくれと言うべきだろうか。それとも、また靴を脱いで走って逃亡するか・・

逃げたとしても男の足の速さに勝てるわけがない、と観念を決め。

私は顔を上げて男の顔を見た。

一瞬見たときもさえないと思ったが、やっぱりさえない男だ。

「あなた、私のこと知ってる?」

私が声をかけると彼はぼーっとしていたのかはっとなって「ぃぇ。知らないですよ?」と返してきた。

まぁすぐには信じられないが、こんなさえない男と彼がつるむわけがないのだ。これでひとまず安心だ。

「何でそんなところにいるんですか?」

男は隣の車止めに腰を下ろしながら話しかけてきた。

「なんでって、あなたに理由いわなきゃいけない?」

「別に良いですけど、だって変じゃないですか。アナタみたいに綺麗な人がクリスマスイヴのこんな時間にこんなコンビニで車止めに座ってるなんて」

「警察に言う?」

「言いませんよ。ただ、気になっただけです」