------麗華side

今日はクリスマスイヴだから、街中を歩いているカップルが多かった。
私の待っている彼は束縛症だから私を部屋から出す事も許さない。だけど、たった一日だけ彼の帰りが遅くなる日を私は知っている、それが―――『今日』―――どんな理由かは知らないが、クリスマスイヴは彼の帰りは必ず遅くなる。

『この場から逃げるのは今日しかない』と私の心が言えば身体が自然と動きバックに必要な物だけを詰めて、必死で覚えた暗証番号を押す。

エレベーターに乗り込み彼が帰ってこない事を願うが、一階で誰かがボタンを押した。

多分彼だ・・私は今の階よりもすぐに下の階のボタンをすばやく押し、10階で下り階段を下りた。

降りる途中にエレベーターの中に見えた顔はまさしく彼だった。

このままじゃ何時追いつかれても不思議じゃないッ。

私はヒールを脱ぐと裸足のまま階段を一気に駆け下りた。

一階まで来ると靴を履きなおし彼のポストに一言書いた紙を入れた。

『これでさようならだよ。もうアナタには二度と会わない』

これで自由だ。

とりあえずドコへ行けばいいのだろう。

このままここにいれば、彼に見つかる。

そんな事を考えながらトボトボと歩いていた私の付いた先は客が誰もいないコンビにだった。

ここら辺ならだれも来ないだろう。

私はもう一度ヒールを脱ぐと疲れた身体を車止めの上に置いた。

携帯を開いて時間を確認するとam2:00の文字が明るく光る待ち受け画面の右上に映し出されている。

さて、これからどうしようか・・

このままこの街を彷徨っていては、きっとすぐに彼に見つかってもおかしくない。

そう頭は考えているのにもかかわらず疲れた身体はピクリとも動いてくれない。

もう少しここに居よう。

私は携帯を閉じると、真っ暗な夜空を見上げてため息をついた。

逃げてくる事が正しかったのだろうか・・・