もう一人の私が囁いた。


-ほらな。



-私達は正しい事をしたんだ。



-これでもう、私達を邪魔する者はいない。



「アハハハハハ」



それは綺麗な赤だった。


恐らく私の病んだ心もこんな色なのだろう。


心地良い、赤い色彩が床一面を染めていた。


-さぁ、帰ろう。



私は床に転がる包丁を手にした。



-よせ!



「お前一人で帰ればいい」




喉から溢れた血潮が、薔薇の花びらのように舞う。


壁に飛び散った赤は、綺麗な薔薇色だ。


遠のく意識の中で、私はもう一人の私に告げた。





「私…達…なんて……今日…で……終わりだ」






私は初めて、
「私」を選んだ。