アムールを見送ると、仕事部屋へ戻りだした。

長い廊下を歩き出すと、同僚のミカエルが待っていた。

思わず、顔をしかめる。

「あからさまに、嫌な顔しなさんな」

人懐っこい笑顔で、近づいてくる。
同時に、ルシフェルの顔も険しくなる。
「なんだ?」
「いやぁ、珍しくお前がナンパしてるからな。しかも、子供」

否定しようと、振り返ると、同僚は真顔で、

「しかも、羽無し。普通なら、育つ前に処分されるべき子供。禁忌の子だ。どういう事だ。」

同僚の言葉は、事実だ。だから、反す言葉が見つからず、

「だから、どうした?」

冷静に、強く睨み返す。
しかし、気にした風もなく、ミカエルはルシフェルを引っ張り、仕事部屋に入り込む。

「外でする話しじゃないだろ。あの子にしてみりゃ、ここは敵の本拠地だろ?なんで入ってきてんだよ」
「知らん」

一言で返され、ミカエルは唖然とする。
それも仕方がない。
この世界は、神と呼ばれる者が管理している。住人はすべて羽を持ち、天使と呼ばれる。

それを、統治するのがルシフェル達の居る官庁であり、上級の天使意外は入れない。

そう、入る事は普通の子供であればできない。

ならば、アムールは何故入れたのか?

まして、羽の無い禁忌の子供が産まれ、成長している。

考え込むルシフェルに、ミカエルが

「羽無しの子供の報告は、上がってないぞ」

察しの良さに、思わず笑いがこぼれる。
「ならば、守るしかないだろう?」

珍しいルシフェルの笑顔に、ミカエルは巻き込まれた事を察知し、頭を抱えるしかなかった。