「嫌いになったか?」
学さんの声が、頭上から降ってくる。
「…え?」
「俺が極道の人間だと知って嫌いになったか?」
「…」
寂しそうな、悲しそうな、心配したような瞳であたしの瞳を捉える。
逃げられない、例の瞳で。
学さん、ずるい。
あたし、学さんのこと嫌いじゃないのに。
そんなこと聞くなんて、ずるい。
心が、揺れ動いている。
傾き、始めている。
「…俺は、別に…誰かに嫌われてもいい。でも、お前に嫌われるのは…、結構つらい」
自嘲気味に笑って、あたしにそう言った。
その言葉が、胸に、響く。
学さん、本当に、ずるい。
そんなこと言われたら、もっともっと…、嫌い…に、なれなくなってしまう。
コレが、どんな気持ちなのかは、分からないけど。
きっと、きっと…、‘‘特別’’と、言うことだけは、分かる気がするんだ。

