「落ち着け、葉奈!!」
「…ぅう…っく……」
「大丈夫だ。大丈夫だから、俺を見ろ?」
学さんの声があの人の声の隙間から入ってくる。
学さんを、見ろ?
何で…
と、思いつつも閉じていた瞼を開け、学さんの顔を探す。
「…」
案外学さんはあたしの近くにいてくれたみたいで、すぐに視界が捉える。
「落ち着け。大丈夫だから」
‘‘大丈夫’’
そう言われているのに、心はちっとも軽くならない。
学さんの声は聞こえているのに、誰かの声が邪魔をする。
誰の声?
ダレノ、コエ…?
「葉奈?」
「…違う」
「え?」
不思議そうに、それでも心配を含んだ目であたしを見る。
「この声じゃ、ない――――……」
じゃあ、ダレ…?
ダレノ、コエ―――――?
「葉奈!」
学さんの声が遠ざかる。
息が上がる。
酸素が吸えない。

