「もういいのかい?」
下に降りると、玄関の前で虎子が待っていた。
「えぇ。バカみたいな顔でぐっすり寝てらっしゃるお姿を見て心配していたのが馬鹿らしくなりましたよ」
もういつもの毒々しい如月に戻っていた。
「…そうかい」
虎子は如月の性格を知ってか知らずかニヤリと笑った。
「では、これで失礼します。夜分遅く申し訳ございませんでした」
いつも通り、きっちり腰から曲げて優雅に一礼し、スタスタと去っていった。
「ほんと、どこの誰があんな冷徹男をここまで人間らしくさせたのかねぇ」
虎子はくっくっと喉の奥を鳴らし、自分も寝床についた。