虎子に言われた通り廊下の突き当たりの部屋まで足音を立てないように向かう。
そっと扉を開き、中へ入る。
そこには月明かりに照らされて、すやすやと眠るリリアがいた。
「こうしてお嬢様の寝顔を拝見できるのも今日で最後なのですね」
愛おしそうに頬を指でなぞる。
「泣き跡なんか付けて…。よほど不安だったみたいですね。だから如月は反対したんですよ?お嬢様は何も分かってらっしゃらない」
指を離し、切なげに呟く。
「でもご安心下さい。如月はいつでもお嬢様の味方ですから。いつでもお嬢様のご帰宅をお待ちしております」
リリアの前では決して見せない柔らかな微笑みを浮かべて一礼し、如月は静かに部屋をあとにした。

