「あの、あたくし……」 いかにも、自分は不安です、といった声は最後まで紡ぎきれなかった。 「何泣きそうになってんだい。大丈夫だよ。別にあたしらは悪いことなんか考えてないから。」 ほっと自然に安堵のため息が出た。 「ぷっ。あんた、分かりやすい子だね。あ、取りあえず、あたしの名前だね。」 亀井 虎子 と名乗った女性は、長くなるよ、と前置きをした。 リリアはもう落ち着きを取り戻し、静かに虎子の声に耳を傾けた。