気が付いたら男は家の中に消えていた。 リリアも慌てるように中へと入ろうとしたが、玄関の敷居の前で立ち止まった。 (これはあたくしも入っていいのよ…ね?) 幼い頃から白鳥家の名に恥じぬよう教育を受けてきた。 当然、理由もなしに誰の物とも知れぬ家に入るのは抵抗があった。 しばらく佇んでいると、中からひょこっと中年の女性の顔が突き出てきた。 「なぁにそんなとこにいつまでも突っ立ってるんだい?中にお入りよ」 さぁさぁと背中を押され、リリアは居間に通された。