お嬢様、家出しちゃいます!




…ブツブツブツ……


リリアの心の声は終いには無意識に口から出てしまっていた。


「…そうよ、あたくし、知らない間に実は別の方の後ろを歩いてっっゔ!」


結論が変な方向に落ち着きかけた時、リリアの鼻に痛みが走った。


どうやら男が立ち止まったらしい。


「ふ、ふみまへふ(す、すみません)」


痛みを和らげようと鼻をつまんでいるため、何を言っているのかいまいち分からないものになってしまった。


「なぜつまむ。着いたぞ」


男は口をへの字に曲げ、そそくさと建物の中に入った。


リリアは口を突き出してぶぅたれながら建物を見た。


「ほ?」


そこはまるでいつかテレビで見たサ◯エさんの家に似ていた。


下町チックで、普通のお嬢様なら一生ご縁の無いような古びた佇まいだった。