森がザワザワと揺れる中、黒い塊がもの凄い速さで木々の間を抜けて行った。
「オ~ニさんこちら、手の鳴る方へ~」
黒い塊はヒヒッと笑うと後ろを振り返り手を叩いた。すると、その後ろをこれまた凄い速さで追う者が一人。
「ゴラアアアァ!!!!待ちやがれてめー!!!」
青年位だろうか?木から木へと難なく飛び移り必死になって黒い塊を追いかけているではないか。心なしか青年が通り過ぎた後には、茶色い羽がひらひら と舞い落ちているように見える。
青年の名を隼(ハヤブサ)。
茶色い短髪で紅い瞳をしている。そして、背が180cm以上ありそうな位高い。耳には沢山の装飾具が付いていて、彼が走る度にシャラシャラと音を立てている。顔立ちは整っていて硬派な印象を与えるが、見ている限り硬派ではないのが一目で分かるだろう。
彼は人間ではなく、その名の通り隼。
大鷹一族の者である。狙った獲物は逃がさない。どんなに早い敵であろうが必ず捕まえ、この大鷹一族の右に出る者はいないのだ。戦闘面においても非常に優れており、その鋭い爪で引き裂かれようものなら、一溜まりもないだろう。
「ヒヒヒッ。そんなものでは大鷹一族の
名が廃るのう、小僧よ」
「っ!!!あんにゃろー!!!」
この黒い塊は邪鬼(ジャキ)。いろんな場所に生息していて、いつも何かしらの悪さを働いている。小柄な体格なためすばしっこく捕まえにくいのが難点だ。
「正々堂々勝負しやがれ!!!てめーなんぞ
この俺様が引き裂いてやらあー!!!」
未だ隼と邪鬼の追いかけっこは続いていた…。
