「あぁ、なんだかもう面倒……帰ろ」
「ええぇぇえぇえっ」
(ミユキさん、貴女と張り合える程の自由人が、いましたここに)
衝撃的な彼女の裏切り発言に思わず絶叫する啓太。
(サヨウナラ、無遅刻無欠席だった日々……)
だが、たった今自分で“帰ろう”と言ったばかりだというのに、少女はまたゆったりと学校へと向かう。
啓太は泣きそうになりながら彼女を追った。
漸く校門をくぐったかと思うと。
彼女は急に立ち止まり、こちらへ向き直った。
そして制服のポケットから、何やら懐中時計らしき物を取り出す。
その仕草にまで優雅さが漂っていて、一瞬見惚れそうにこそなるが、啓太は心底呆れてしまう。
「時計持ってるなら、どうして遅刻する前に見なかったんですかぁ……」
「残念だけどこの時計は正しい時刻は指さないの」
「壊れてるんですか?それなら新しいのを買えば―――…」

