振り向いた彼女を見て、啓太は思わず足を止めてしまう。
息を切らせて走っていた事も忘れる程の寒気と、鳥肌が立つのを感じる。
整った顔立ち。
指通りのよさそうな灰色の髪は柔らかく風に揺れ、啓太よりたっぷり頭一つ半高いスラリとした長身はただ立っているだけなのに気高さを感じさせる。
……綺麗な人だ。
けれどその瞳は全てを見透かしているようで、その肌は不気味な位蒼白い。
凛とした、それでいて妖しげな、どこか恐ろしい雰囲気。
美人ならこの学校にも大勢いるが、こんなにも神秘的な印象の少女は見たことがない。
「えっとあの……遅刻……」
「え、なにもうそんな時間?」
玲瓏と響いた声が、完全に圧倒されモゴモゴ言っている啓太の言葉を遮る。
彼女が口を開いた途端、彼女を包んでいた凍てつくような空気がふっとやわらいだ。ように啓太には感じられた。
全身を襲っていた寒気が消えたのだ。
「まぁ別に気にする事もないと思うけど。このくらいの遅刻、どうってことないでしょ?死ぬ訳でもあるまいし」
な、なんという胆力。
というか、この女学校を嘗めている。

