“冗談は顔だけにして”とでも言いたげな表情で、舞白は

「別に貴方にどんな趣味があろうと私は気にしないわ。でも私を巻き込むのはやめて下さい」

と低い声で威圧してくる。

(敬語で距離を置かないで下さいぃぃぃっ!)

自分が敬語キャラである事は棚に上げて、啓太は震えあがった。

それでも何とか声を絞り出せたのは、普段からいろんな意味で恐い女性達に囲まれていたお陰かもしれない。

「ぼ、ぼぼ僕の趣味とかそんなんじゃなくて、その、ど同級生の女子にですね、舞白先輩に文化祭のめめメイド喫茶に参加してくれないか交渉するように、たっ頼まれただけで!」



「……あぁ成る程、そういう事」

とりあえず誤解が解けたらしく、安心する啓太だったが。

「お断りいたします」

玉砕。

「そっそんな即答しなくたって……」

「何故私がよく知りもしない後輩のためにメイド喫茶なんて物を手伝ってあげなくちゃいけないの?」

啓太はわかっていなかった。

この生徒は大喜びでメイド服を着てくれるような女性でもなければ後輩のために一肌脱いでやろう等というタイプの先輩でもない。