図書室には、啓太を含めても五、六人の生徒しかいなかった。
図書委員は仕事をサボっているらしく、本の貸し出し等を行うカウンターには誰もいない。
借りたい奴は勝手に借りてくれといった感じだ。
当然ながら、因幡舞白はすぐに見付かった。
舞白は“近付くな”というオーラを醸し出しながら“世界の刃物大全集”というあからさまに怪しい本を読んでいるところだった。
テーブルの上には
“壊れた時計の直し方〜鳩時計から腹時計まで〜”
“神様と遭遇した時の対処法Ⅵ”
“君もイギリス行っチャイナ!〜基礎から学べるロシア語〜”
“お菓子をめぐる可笑しな喧嘩史”
“馬鹿でも出来る!読心術(入門編)”
“方向音痴と行きたい世界の絶景百選”
等々、これまた胡散臭そうな本の数々。
そんな恐ろしい本を読んでいても気品を感じさせてしまうのだから不思議なものである。

