「君、みたいな……っ子供ガ、何故……」
彼の口から途切れ途切れに出る声は、もう以前の彼のものとは違う。
擦れ、張りはなく、安定感の欠片もない。
それはノイズの酷いラジオの如く。
もはや立ち上がることも出来なくなった男を見下ろす私は、濁り始めたその目にはどう映っているのだろうか。
「こんな、所ニ、いたら、危険ダ。……はやく、逃げ、ナ、さい」
逃げるもなにも、この島は今どこへ行っても、ヒトを食らう屍だらけ。
もしも私が“普通の人間”だったなら、この建物へ辿り着く前にその一体にでも捕まり、目の前のこの男のようになっていたことだろう。
そして彼もまた、こんな所にさえ来なければ、ここまで“時間”を浪費することもなかったのに。