真夏、太陽が散々と照りつけるある日。
バイトが終わってから、店長が広瀬に声をかける。
「朔、隆二から手紙来てたぞ。」
「はぁ?今さら何…」
店長は有無を言わさず手紙を押し付けると、店の奥へと戻っていった。
「何?誰から??」
隆二って?
さりげなく広瀬の手元を覗き込む。
「別に。」
広瀬はふいっと私に背を向けて、手紙を乱暴にズボンのポケットに突っ込んだ。
エアメール…
ちらっと見えたアルファベット文字。
外国からの宛先が書かれていた。
「ちょっ………、気になるんですけど。」
「関係ねーだろ。首突っ込んでくんな。」
「…。」
わざとむくれた顔をした。
が、意図も簡単にスルー。
は、反応すらしてもらえない…。
そして帰り道、広瀬の後ろを歩きながら鞄の中を見る。
そこには相変わらず、渡せずにあるプレゼントがあった。
このまませっかく近づいた距離もまた元通りになんのかなぁ…。
知らず知らずの内にため息が漏れる。
すると急に広瀬が振り返った。
「分かりやすくため息なんか…って……」
「え!?な、何?」
広瀬は私の髪の毛を凝視する。
そしてイライラした表情から、一瞬だけ優しい目に変わる。
「…別に。」
あ、きっと髪ゴムだ。
バイトは三角斤を着けてるから、隠れて見えなかったんだと思う。
髪ゴムは貰った日から毎日の様に付けている。
さりげなく、広瀬にアピールしてるつもりだったりして…。
広瀬が、気づく度に優しい目を向けてくれる事があると、最近気づいた。