とにかく、広瀬の苦手克服を手伝うこととなった。
簡単に言うと、広瀬は6歳の時に海で足をつって溺れた経験があるらしい。
「ふーん…それで苦手になった、と。」
「…んだよ。」
「それ、しっかり準備体操しなかったからだって。」
「う、うっせーな。知ってるわっ!」
嘘つけーっ!!
君さっきから、「何でああなったのか、分かんねぇけど…」って連発してたじゃないですか!
とは、言える筈もなく。
「ふぅーん。」
笑いを堪えるので精一杯だった。
でも私もたかが足つっただけ、なんて笑えない。
その場に誰かいなければ生きてなかったかもしれない。
「重症になんなくてよかったね。」
「…お、おう。」
私が笑うと広瀬はまたいつものようにそっぽを向いた。
「んじゃ、まずは水中歩行からー」
「……。」
私が歩きながら広瀬を見ると、なぜか立ち止まっている。
歩くのも無理なのか…。
仕方なく、元に戻って広瀬の手を掴もうと、腕をだした。
あ…。
広瀬の手、握っていいのかな…
うわ、妙にドキドキしてきた。
どうしよ、どうするべき?
手を繋ぐ?それとも腕を掴む?
ぐるぐる考えていると…
「俺、やっぱ無理…」
「え!ちょ…」
がしっ!
反動で手を掴んだ。
「克服するんでしょ?」
「……。」
「…そんな睨まないで下さい。広瀬様を思っての行為なのです。」
私の言葉に広瀬はため息をついた。
「克服出来なかったらアイスおごれよ。」

