私、瀬戸内奈絃(セトウチナツル)はとんでもない失態をしてしまいました。






「おい、お前……何してんだよ。」



「…すみません」



「ソース」


「すみません」



「……」


「すみません」





「…………奈絃」


「すみませ…はい!!!只今!!」



謝ることに集中していた私はドスのきいた低い声と鋭い目付きに気付き、目の前に差し出されたブレザーを取ってトイレに直行。


水道の蛇口を捻りながら、汚れた制服を洗う。



「はぁ…焦った焦った。」


「奈絃がぼーっとしてるからでしょ。」



「それはー…そうだけど。」

一緒についてきてくれたリッカ(本名・本田律華<ホンダリツカ>)と話をしながら手を動かす。




それにしてもあの男は他人に対する態度がでかい!


「焼そばパンのソースがちょっとついたくらいで、あーんな怖い顔してさぁ。」




「いつものことでしょ。」


「そうだけど…。」


軽くため息をつきながら、綺麗になった制服を手にトイレを後にする。



女子トイレを出れば、もう奴の領域だ。

ビクビクしながら教室に向かう。



「奈絃ちゃん、朔が機嫌悪いんだけど…何かあった?」



教室の入り口で男子に止められる。


「ヒロ君……実は…」



ヒロ君。

彼はこの制服の持ち主の幼馴染みだ。




「…って事があって…」