「ふうっ……」 頭をかきながら、奏が長いため息をついた。 「円」 名前を呼ばれた。 なのに私は、ドキッともしなかった。 いつもならウサギになる心臓も、普通に動くことすら面倒だとボイコットするみたいに、波風ひとつ立たたない。 心が、ひと粒も弾けない。 「円?」 「…………」 声も完全に鍵をかけて閉じこもってる。 返事ができない。 その副作用からか、鼻の奥がツンとしてきた。 まばたきしたら、頬に熱いものが伝った。 「お、おい……」