「円」 名前を呼ぶが早いか、奏は私の腕をつかんで引き寄せた。 「きゃっ……」 かすかに声がこぼれた私を、後ろからかぶさるように抱きしめてくる。 「可愛いじゃん、浴衣姿」 「ほん、と……?」 自信がない私は、つい確認をしてしまう。 いけないとは知りつつ止められないこれも、ひとつの悪癖かもしれない。 「ああ。可愛い」 ささやき声と適度な温度を持った息が、右の耳をくすぐった。 「ぅ……ぁんっ」 思わず、甘い声が唇のすき間からこぼれてしまう。 (こういうの、ズルいって……)