「こんなにくっついてたら……」
「くっついてたら?」
立ち止まって、私を見る奏。
聞いてもらえるのはありがたいけど、ガッツリ私の話を聞きますよという体勢を取られると、それはそれでいいにくくて。
とたんに臆して撤退しそうなる声を、どうにか絞り出した。
「その……学校の子たちに見つかって……奏に……迷惑が……えっと――」
「くらだねぇ」
言葉をさえぎって、奏が私の頭に優しく手をそえて強引に引き寄せた。
「んっ……」
ぱふっと、肩のあたりに私の顔がくっつく。
「そんなのいいから、絶対オレから離れんな。そばにいりゃいい」
「だ、だけど――」
「返事は?」
「……う、うん」
重かった心が、急に空気どころか水素みたいに軽くなった。
私にいわれているのに、なんていうか、他人事のような気持ちだし。
奏と出会ってからの数日が、あまりに今までの人生と違いすぎるからかな――。
私って、一生どころか「来世の運」まで前借りしてるのかもしれない。
借りたつもりはないけど。
「行くぞ」
結局、人目もはばからずに、私は彼にくっついたまま、「帰り道のふたりきり」を過ごした。


