そして、やがておとずれたわかれ道。
彼が「また明日な」と去ってから、私は缶をまじまじと観察した。
「……飲みかけ……」
どこからどう見ても、単なる缶。
なのに、タブが開いてて中身が半分になってるこれは、私にとって10分完売の人気バンドのプラチナチケットよりも貴重な、とんでもないレアな缶。
さっきまで奏が……彼氏が飲んでた、缶。
飲み口に、彼の名残がまだいっぱい残ってる、缶。
「…………」
どれくらいじっとしていたのか。
汗が蒸れた胸の間をすべり落ちたのを合図に、まわりに誰もいないのを、なぜかコソコソと確認して。
コクッ。


