「にしても、暑いな」 大通りに差しかかると、彼がふと早足になった。 密着している私も、自然につられて押される形に。 「…………?」 「あそこ」 「えっ……?」 彼が目をやったのは、少し先の歩道わきにあるジュースの自販機だった。 そこで立ち止まって、私を見下ろす。 「コーヒー好き?」 「え……あ、え?」 「……まあいいや。コーヒー嫌いなやつってあんま聞かないし」 もじもじする私の答えを待たずに、自販機に向き直った奏は、ポケットから小銭を出して入れ、ボタンを押した。