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校内にいる間、奏は相変わらず。
私とは、恋人じゃないみたいに振る舞っていた。
視線をどれだけ送っても、特にいち早く気づいてくれるわけでもなく。
休み時間に、誰もいない階段でたまたま出くわしても、ポケットから手も出さない。
私が地味で空気だから見えないとでもいわんばかりに、無言で通り過ぎるだけ。
せっかく、「いわれた通り」にしてきたっていうのにな――。
そのくせ。
放課後になると、態度が一変して。
歩きながら奏がポケットから出した手は、私の腰に遠慮なくすべりこんでくる。
「どうした?円」
「え……あ……うん……」
一度風邪をひくとそのシーズンはだいぶ免疫ができるように、触れられることへの耐性は、ほんの少しできたらしい。
ビクッとはしても、さすがにカチコチと固まるということはなくなった。
思えば、おでこキスを体験したからかもしれない。


