(なんかある……裏がきっと……)
あんなイケメンと恋仲になるなんて。
念願だった、夢にまで見た「恋愛」というものが、私に訪れるなんて。
確率は100どころか、200%も300%もないはずだ。
私の自信と同じ、私の名前の「円」と同じ。
ゼロ。
スクールバッグの腹いせに、からかってるだけとか。
じゃないなら、遊びの罰ゲーム。
(ありえる……ただ……)
もしかしたら本当に――と頭をよぎって、すぐに消しゴムで消す。
そんなわけない。
希望なんて、夢見るなんて、無駄。
裏切られるのがオチ。
とかなんとか、マイナスなことを列挙して、さっきの「もしかしたら」を頭から押し出そうとした。
なのにこの夜は、ベッドにどれだけ深く潜っても、夢に門前払いされるだけだった。
7月の暑さのせいか、興奮のせいか――。