「でも、当日に奏くんがしつこく頼みにきたから、根負けしちゃって……。ごめんね、楽しみにしてた日に」
「いえいえ。もう気にしてませんから……」
「うん。ありがとう」
(そっか。だから、当日に早退して、放課後に『こい』っていったんだ)
欠けていたピースが、カチカチっとはまっていく音が聞こえた気がした。
奏の不可解な行動には、ちゃんとした理由と背景があったんだ。
彼の不安な気持ちもうかがい知ることができて、私はまたひとつ、距離が近づいた気がした。
千ほども離れていた距離が、またほんの少しだけ。
「心配しなくても、奏くんには、指一本触れてないから。安心していいよ」
ねっ、というふうに目で合図を送ってくる。
「は、はい」


