――バシィッ!!
私は、その頬に平手打ちをした。
彼がかけているツルに指が触れ、黒ぶちのメガネが飛んで地面に転がる。
手をゆっくりおろしながら、私は「ごめん」と謝ってそれを拾った。
「こうでもしなきゃ、話……聞けるほど心に余裕、なくて……」
兄弟もいないし、ケンカもしたことなんてないから、誰かに手をあげたことなんてなかった。
だから、加減を調節できずに、とにかく全力で叩いてしまった。
手のひらがジンジンする。
「ああ……わかってる。もっと、やるか?」
いいながら、私を見下ろす奏。
メガネをかけてない顔は初めてだったけど、レンズを通さずに直接見る彼の目は、拓人さんにひけをとらないくらいに美しかった。


