(えっ……何入れたの?) ジャッ、と靴が地面にこすれる音。 奏が立ちあがったのだろうか。 『すみません。百合岡さんに宛てた手紙を入れておきましたので、お手数ですがおわたしいただけないでしょうか』 (手紙……?) 私だと気づいていないのか、彼は丁寧な口調でいった。 それでも無言を貫いていると、 『絶対読んでくれ』 ささやきに似た、かすかな懇願の声がした。 「…………」 気づいてたんだ。 ドアを隔てた向こうに、奏がいる。 私に気づいてる、奏が。 ノブをひねれば、会える――。