「…………!?」
無意識に一歩、後ずさる。
廊下がきしんで、ミシッとやや大きく鳴った。
『こんばんは。百合岡さんと同じクラスの、千住奏と申しますが』
誰かが中にいることに気づいたのか、奏はふたたびくり返した。
(どうして……ここが……?)
ふと考えて、すぐに思い当たった。
奏は私の住所を知らないけど、拓人さんは家まで送ってくれたことがあるから、知ってい
る。
おそらく、彼を経由して知ったのだろう。
「…………」
無言でドアの向こうをうかがっていると、何かガサガサと音がして、沈黙。
気配だけは残っているから、私も動くに動けない。


