観察しつつもパニック状態の私は、ふたりに会釈もできず、必死に頭を整理することに集中。



……でも、当然、ダメだった。



「オレの一生のお願いだ」



ふと、奏がいった。



あやうく、出店に群がる人たちの雑音にかき消されそうな、か細い声で。



ゆらっと視線をやると、奏は下を向いて暗くしずんだ顔をしていた。



たまに見せる、謎めいた表情。



でも、すぐに元のクールにもどって、きびすを返した。



「じゃあな。もう行くわ」




(奏……)




声に出せない、というか、声が引きこもって出てきてくれない。



「えっ?奏くん、ちょっと待ってよー。せっかく浴衣着たのに。お祭りは?」



古都さんが、鳥居をくぐって神社を出ていく背中を追いかける。





何よ、これ――。




どういうこと――。