(こういうの、ズルいって……)
とろけるセリフに、冬でもないのに一瞬鳥肌。
奏は、私の両腕をさするようにしながら身をはがして「外で感じるなって」と笑った。
「ち、違うもん……。くすぐったかっただけだし。もぉ」
「つか、耳赤くしてるし」
指摘されてすぐ、私は出していた耳を、垂らしていた髪の毛で隠した。
「……ゆ、夕陽のせいですっ!」
バカ――。
こんなふうに後ろから抱かれてほめられたら、誰だって耳も熱くなる。
相手が彼氏なんだから、なおのこと。
それを見透かしてからかってるところが、いつもちょっとだけ悔しかった。
「まあいいか。なあ、円」
メガネを指で直す奏。
この仕草は合図みたいなもので、こうやるときは、決まって話題を変える。


