口調はいつもの俺様だけど、知的なメガネの奥の目は怒ってない。
私は、少しだけ渋面を作って、
「だって……急にこいっていうんだもん。奏、きのうは暑いからって断ったのに」
本気で反抗してるわけじゃないんだよ光線を発しながら、けれど控えめに抗弁した。
別に、振り回されるのは嫌いじゃないけど……。
「円」
名前を呼ぶが早いか、奏は私の腕をつかんで、後ろからかぶさるように抱きしめた。
「可愛いじゃん、浴衣姿」
ささやき声と適度な温度を持った息が、右の耳をくすぐった。
「ぅ……ぁんっ」
思わず、甘い声が唇のすき間からこぼれてしまう。


