昇降口に着くと陽谷くん達がまだ靴を履き替えていた。
話し掛けられる…
これはチャンスなんだろうけど、私にはそんな勇気はなかった。
「ちょっとごめんね～っ‼」
と元気な女の子の声が真後ろで響いた。
その声にハッとして自分が通路の真ん中に突っ立っていたのに気づいた。
ちょうど彼女の通行を妨げていたみたいで
「すみません」と言って避けながら歩きだした。
彼女が下駄箱のロッカーの角に消えると
追いつくように私たちも角を曲がる。
その時、彼女が陽谷くんの名前を呼んでバイバイと両手で手を振った。
それに応えて両手で手を振り返す陽谷くん。
両手で振るなんて可愛いなあ…
なんていつもなら思うはずなのに。
