…タタン、タタンタタン


(…ん、ゆら、ゆら…揺れてる…夢の続き?)

心地よい揺れ、時折聞こえる汽笛。

「…そうだっ」
飛び起き、思い出す。

(寝台列車、乗ってたんだ…柊くんと)

ふと、柊の寝台を見る。
誰もいない、きれいに畳まれた寝具。


「柊、くん?」

ドクンと鼓動が唸り、流羽は個室を出た。
車窓の並ぶ廊下を進み、簡易食堂や展望車両に柊の姿を探す。

(どこ?どこなの?柊くん!)

次第に早くなる足取り。と、その時、


「あっ!」

貨物車両へ続く廊下に、柊の姿。
見つけ、流羽はホッと緊張が緩んだ。

だが、声を掛けようとして近づき、気付く、

(ーあの人っ!?)

柊の向かいに、黒いスーツを纏った男がいた。


(…何で?何で柊くんが、あの人といるの?)

 2人は幾つか会話をし、柊は男に何か云い、微笑んだ。

(柊…くん…)

声が掛けられない、声を掛けてはいけない


流羽の心が、ざわついた。