「じゃあ聞いたのね…私がもう長くないって」


「っつ…」

一番、考えたくなかった。
そんなの嘘だって。

嘘ってだれか…誰でもいいから言ってよ。


「自分でもわかるんだ…私、そろそろ」


「んな事言うな!紗弓が死ぬわけないだろ?!」


「…」


お願いだから、そんな事言わないで。
少しで良いから、希望を持たせて。


「はぁ、はぁ…十雅と別れた理由…はね、」


「ん…」


「私が死んじゃったら私たちの関係はそこまで。

だから…そんな事なら、別れて十雅には他に…」


「…」


…どーゆー意味だよ、ソレ。
俺には幸せになってほしいって?


「ばっかじゃないの?」


「ぇ…?」


「お前が居ない幸せなんか、本当の幸せなんかじゃねぇよ」


俺の未来は、紗弓と一緒に見たいんだ。
紗弓がいない未来なんて、興味ない。


「私よりも可愛い女の子じゃないと、許さないんだからね…?」


「まだ言うか…」


「だって、もう十雅とは話せないかもしれないんだもん…」


だから今のうちに喋っておきたいんだv
そう言って苦しそうに笑う紗弓。


「…紗弓、私はちょっと出てくるわね」


「うん。っゴホッ、ケホケホ…」


「大丈夫?!」


「ぅ、ん…平気」


そんなやり取りをすると、
紗弓のお母さんは病室を出て行った。


「…ねぇ、私のお願い…聞いてくれる?」


「うん?別れるって事以外ならいいぜ?」


布団から俺を上目遣いで見る。

やっぱ熱があるから、すごく色っぽく見える。
これが前の紗弓だったら俺、襲ってるかもな…。

そんな事を思って、心の中で苦笑。


「で、何?」


「…キス、して…?」


「!」