家に帰るとゴロゴロゴロ…と、
雷の音が聞こえた。


そして次の瞬間、ザザーーッと大雨。
嵐のように風がビュウウッと音を立てている。


おまけに窓までがガタガタと揺れている。
テレビを見ても台風じゃないらしいけど…


ただでさえ気分が浮かないってのに…
まぁ、晴れ晴れとしてたら逆になんか嫌だけど。


そのとき、ピンポーンとチャイムが鳴った。
こんな嵐の中?


玄関に向かって、ドアを開ける。
そして俺の目の前には


「十雅、話があるの」


ビショ濡れで、光の宿っていない瞳で俺を見つめる
紗弓の姿があった。


「さ…紗弓、服びしょびしょだぜ?シャワー浴びてく?」


「ん…いらない。どうせ帰りも濡れるんだから…」


そう言って、紗弓は冷ややかに微笑んだ。
その笑顔に、ぞっとしてしまった。
嫌な予感が…したんだ。


「2階の部屋で待ってて。飲み物取ってくる」


「うん…お邪魔します」


サンダルを脱いで、階段をゆっくりと登って行く。

俺は麦茶とバスタオルを持って
すぐに紗弓の後を追った。


嫌な予感は
拭いきれないまま。


部屋に入ると、
紗弓は落ち着かない様子で行儀良く床に座っていた。

まるで、付き合い始めてから
初めて部屋に入ったときのように。


『何度も来てるのに何か緊張する~っ』


『俺に襲われる可能性があるから?』(笑)


『ちっ、違う!ただ、意識しちゃって…えへへ…』


一年前の事が回想される。


俺は紗弓の前に座ると、タオルを差し出して


「髪くらい拭けよ。そこにドライヤーもあるしな」


「ありがと…」


紗弓は暗い表情のまま、
受け取ったタオルで髪を拭き始める。

そんな仕草が、色っぽく感じてしまう。


「…で、どうしたんだよ」


はっと、そんな場合じゃないと思い出して
紗弓に話しかけながら彼女の前に麦茶の注がれたグラスを置いた。


そして自分のグラスを握ったまま
紗弓の斜め向かいに座り直した。