次の日に来たのは、クラスメイトで何回か話した沢渡真綾だった。

密かに天音を期待した俺は、なんて未練がましいんだろう。


「こんにちはぁ~志紀クン」

「……お前、誰だ?」

「ヤダぁ。真綾の前では記憶喪失のフリしなくていいんだよっ?」



バレてる……?

俺は必死で言葉を手繰り寄せた。



「何の事だ?」

「無理しちゃってぇ。ホントは覚えてるんでしょう?」




これ以上は……無駄か。



「何の用だ」

「あぁ。忘れてた……真綾と付き合ってほしいの」

「は?」

「そうすれば真綾はぁ、志紀クンが手に入る。志紀クンの天音ちゃんに対する想い消えるかもしれないよぉ?」



天音への想い……。



その言葉に不思議な感覚に陥った。