「さっきは、俺の若いやつが世話になったようでな・・・礼を言いに来たぜ。オィ、どいつだ?オマエの羽をむしったクソ生意気な相手は?」


 オニヤンマは残忍な水色メガネを輝かすと、後ろにいた羽なし赤とんぼに声をかける。



「あ、アイツです、オヤビン。あのカエルが俺の羽を撃ちました。」



 けっ・・・自分じゃ何も出来ないから、ボスの登場か・・・。


 まったく、トンボ道の風上にも置けないやつめ。


「てめぇか・・・『殿様』の分際でやってくれたな。」


「てめぇだって、たかがオニヤンマの分際で威張るんじゃねぇ。」


「トンボの王様だぜ、威張って何が悪い?てめぇなんざ、『牛』の足元にもおよばねぇじゃねぇか・・・。おかしな話だよな、殿様より、牛の方が上なんてよ!」


 言うと、目の前のオニヤンマは、ハハハハハと、笑い声を上げた。


 てめぇ・・・。


 一瞬怒りで我を忘れそうになる俺。


 しかし、その笑い声を聞いた瞬間、思い出したのだ。


 この笑い声は!


「てめぇ!もしかして、あの頃のヤゴか!」


 間違いない、こいつは、あの時俺の兄弟を全部食っちまった、あのヤゴだ。


「ん?何の話だ?」