「オヤジ、じゃまするぜ・・・いつものヤツをくれや。」


 赤とんぼは、悠々と俺の隣の席に座ると、いつものヤツを注文する。


 その瞬間、店の雰囲気がガラリと変わる。

 
 まぁ、どこにでも嫌われ者はいるものだ。


「すまんが、お前に出せる酒はない。いい加減、ツケを払ってもらわないと・・・。」


 ゲンゴロウのマスターがそんなことを口にするが・・・


「あぁ!いいのか?ここの一体の治安を守っているのは誰のおかげなんだ?」


 赤とんぼは、腰から拳銃を取り出すと、マスターに突きつける。


「いいから、『綺麗な山から取れる、新鮮な川の蒸留水』だ。間違っても、『水質汚染が進んだ、河口付近の川の水』を出すんじゃねぇぞ。俺の水色メガネが曇っちまうからな。」


 言うと、赤とんぼは、椅子にドップリと腰をつけて・・・


「あぁ、お前ら何じろじろ見てるんだよ?」



 ・・・と、他の客にガンを飛ばした。


 まったく気にいらねぇ・・・。


 気にいらねぇ、水色メガネだぜ・・・。


 いくら青いお空を飛んだからって、調子に乗るんじゃねぇ。