俺の彼女はインベーダー

 ところが水素原子の中にはほんの少しだが原子核の中に「中性子」という素粒子を抱え込んでいるやつが存在する。中性子は電荷が無く、つまりプラスでもマイナスでもないから水素原子全体の電荷に影響を与えずに原子核の中に潜り込む事が出来るわけだ。中性子の質量、つまり重さは陽子とほとんど同じ。だから中性子を含んだ水素原子はそうでない水素原子の約二倍の重さになる。だから「重水素」と呼ばれる。
 この重水素同士が核融合反応を起こして合体して一つの原子核になるとヘリウムという元素に変わる。この時、莫大なエネルギーを熱の形で放出する。ちなみに太陽のエネルギー源は主にこの水素の核融合だ。だから太陽というのは何十億年もの間、あれだけの光と熱を放出し続ける事が出来るのだ。
 何億個もの重水素の原子核をこれまた一秒の何百分に一という短時間に核融合させてドッカーンと熱エネルギーを放出させると原子爆弾の何十倍、何百倍もの破壊力を持った爆弾になる。これが水爆だ。
 これだけでも十分恐ろしい兵器なのだが、科学者という人種の欲望にはきりがないらしく、中性子爆弾という物の研究が始まった。
 これも中性子に火をつけて爆発させるわけじゃない。というより、中性子爆弾は水爆の一種だ。原子核内部に中性子一個を抱えている水素原子があると言ったが、中性子を二個抱えている水素原子も存在する。これを「三重水素」と呼ぶ。
 水爆の原理でこの三重水素を核融合させるとどうなるか?反応の最後に出来上がるヘリウムの原子核は陽子二個、中性子二個で出来ている。三重水素は陽子一個、中性子二個だから、これが二つあると陽子二個、中性子四個になる。つまり核融合の後、中性子が二個余る事になるわけだ。
 中性子だけでは原子核を作れないから、この余った中性子は原子核の外にものすごいスピードで飛び出して行くことになる。何億個もの三重水素の原子核を一瞬の間に核融合させると、数え切れないほどの数の「高速中性子」が四方八方に飛び散る。