俺の彼女はインベーダー

 麻耶の狙いは的中した。アメリカの経済は大混乱に陥り、わずか二週間の間に三つの投資銀行と十以上のヘッジファンドとかいう物が破綻した。アメリカの政府も中央銀行も全然知らない、発行した覚えがない百ドル札が何億枚、あるいは何百億枚だろうか?突然世界中に出現したのだから当然だ。
 日本の新聞はこぞって「アメリカの没落」とか「ドル体制の終焉」とか刺激的な見出しで今回の騒ぎを報じた。EUやロシアの政治家が今後の国際貿易は我が国の通貨で、とかマスコミに吹きまくり、米国大統領が真っ赤な顔で頭から湯気をたてそうな勢いで反論する、というような光景がテレビのニュースで連日踊った。
 俺たち三人はもちろんその光景を大喜びで眺めていた。いや、まさか、こうも上手くいくとは!しかしこんな展開を正確に予測出来た麻耶が一番すごい!世界最強のジョシコーセイだ、我が妹よ、お前は!

 が、上手くいったのはそこまでだった。俺たちが今回の作戦を開始して十七日目、全ての混乱はあっけなくおさまってしまった。それはアメリカのFBI長官の全世界同時中継のテレビ番組での発表によってだった。
 今回の大量のドル紙幣の流出は偽札事件だったと発表されたのだ。それはその通りだ。ラミエルの物質複製機で作った百ドル札だったのだから……でもなんでばれたんだ?
 FBI長官の言葉を同時通訳している日本のテレビのニュース番組を食い入るように見ていた俺たちは、この言葉で自分たちがとんでもない大ポカをしでかしていた事実にやっと気付いた。
「今回大量に発見された百ドル紙幣は全て通し番号が全く同じであり、FBIは過去に例を見ない大規模な通貨偽造事件として……」
 しまった!どこの国の紙幣にも偽造を防ぐため一枚一枚に十ケタぐらいの番号が印刷されている。俺たちが世界中にばらまいた百ドル札は、俺が近所の銀行で手に入れてきた百ドル札のコピーだから、その番号も全部同じだったんだ。