俺の彼女はインベーダー

 そう言って麻耶はその二軒の店の入り口を食い入るようにじっと見つめ始めた。俺は言われるままに腕時計を眺めながら、我慢できなくって訊いてみた。
「どうして早く入らないんだ?」
「数を数えてるのよ」
「何の数だ?」
「入っていく客の数。この時間帯は店に売りに来る客が多いの。どっちの店に多く客が入るか見てるのよ」
「なんでそんな事をする必要があるんだ?」
 麻耶はこれ見よがしに「ハァ」とため息をついて小さな子供に言い聞かせるような口調でこう続けた。
「商品取引所とかと違ってさ、こういう小売店での金の買い取り価格は毎日変わるし、店によってもわずかに違うし、同じ店でもその日によって少しだけど高かったり安かったりするもんなの。今日の買い取り価格の相場はアパート出る前に一応ネットでチェックはしたけどね。けど念のため、どっちの店に多くお客が入るか、見てからにするのよ」
 なるほど、と俺は感心した。小さい頃からしっかりしていると言えばこれほどしっかりした子供はいないという妹だったが、これほど頼りになるとは!
 が次の瞬間ある疑問が俺の心の深い所からジワっとにじみ出てきた。
 高校一年生の女の子が、なんでこんな事にそこまで詳しいんだ?