俺の彼女はインベーダー

 ズシンという音と共に、あの巨大生物がタワーから俺たちのいる方向に体の向きを変える。その巨体のところどころから、血がしたたっていた。さっきのタワーの迎撃光線でだいぶ傷ついたようだ。その目は血走って周りの地面を見下ろしている。
 やつが一歩前に踏み出し「グゥワー」と咆哮を上げた時、とうとうユミエルが地面に膝をついて絹を裂くような悲鳴を上げた。
「キャー!ああ、うわあ!イヤーーーーー!」
 何が起きたのか分からなくて俺が茫然としていると、桂木二尉が俺の横を走り抜けてユミエルに駆け寄り、首の後ろを手刀で一閃した。ユミエルはそのまま地面に崩れ落ちる。駆け付けたサチエルが彼女の体を抱き起こし、二尉に詰め寄る。
「何をなさったんですか?」
「一旦気絶させただけよ。テレパシーを遮断するためにね。しばらくすれば目を覚ますわ」
「どういう事ですか?」
 桂木二尉は巨大生物を見上げながら答えた。
「あの牙の形状からして肉食獣に違いないわ。敵の迎撃で傷を負って、怒り狂っているのよ。その野生の肉食獣の攻撃本能、闘争本能の思念がユミエルさんの脳にテレパシーを通じて逆流していたのよ」
「ガオー!グワ、グワ、グワォーン!」
 あの巨大生物が怒り狂った様子で町の建物のある方向へ進み始めた。横殴りに振るう巨大な尾が俺たちの方に向かって飛んで来た。俺は小夜ちゃんをとっさに抱き締めて体を地に伏せたが、その尾はまっすぐ俺たちに向かってきた。これは避けられない。
 が、その尾は寸前の所で何か見えない壁に突き当たったかのように、空中で不自然に動きを止めた。俺の横でサチエルが両手を体の前に突き出して、額に脂汗を浮かべて必死の表情で立っていた。まるで見えない何かを押し返そうとしているみたいに見えた。そうか!サチエルがテレキネシスで巨大生物の体を押さえているのか。
「今のうちに早く!相手が大きすぎて、わたくしの力でもそう長くは……」