俺の彼女はインベーダー

 そう言われて銃口の先を見た俺も二尉も驚きのあまり声を失くした。二尉の自動小銃の銃口にはいつの間にか、銀のナイフがささっていた。二尉があわてて抜き取ろうとするが、固く押し込まれていて抜けないようだ。もしあのまま引き金を引いていたら銃身が破裂していただろう。二尉は自動小銃を棍棒の様に振り回すが、メイドは軽々とかわしてまた飛びのく。二尉は自動小銃を地面に投げ捨て、腰のホルダーから拳銃を引き抜きながらまたメイドに叫んだ。
「あなた、やっぱりただ者じゃないわね!」
「いえ」
 メイドは憎たらしいほど落ち着いた表情と口調で、右腕を胸にあて優雅に一礼しながら答えた。
「あくま……で、メイドですから」
 く、黒メイド?ただでさえ時間がない時に厄介な相手が出てきやがった。その後サチエルがテレキネシスで攻撃を仕掛けたが、メイドはどれもこれも軽々とかわしてしまう。その動きはまるで社交ダンスでも踊っているかの様に見えた。
 だが、偶然ユミエルと体がぶつかると、意外な事にメイドはあっけなくバランスを崩してよろめいた。その時俺はある可能性に気付いた。小夜ちゃんをラミエルに預けて俺は黒メイドの前に立ちはだかり、ボクシングのファイティングポーズを取った。
「来い!お互いの肉体で勝負しようじゃないか」
 そう言った俺にメイドは感心した口調で答えた。
「おや、お気づきになりましたか」
 やはりそうか。イケスカンダル人は高度に発達した科学文明に慣れているから、武器や超能力といった科学の産物に対しては強いが、原始的な肉弾戦には慣れていないはずだ。
 それに相手は所詮女。俺は全身の筋肉に意識を集中して黒メイドに襲いかかった。そして10秒後、相手に指一本触れる事も出来ないまま、他のみんなが集まっている場所まで吹っ飛ばされた。くそ、格闘技もプロ並みじゃないか、あのメイド。
「もう何よ、かっこつけた割にはだらしないわね」