「麻耶ちゃんはどうする?」
 桂木二尉は麻耶に向かって訊いた。麻耶はいつものごとく半分面倒くさそうな口調で答えた。
「あたしはどっちも興味ないから、ちょっとその辺をぶらついて来るわ」
 というわけで小夜ちゃんに手をちぎれんばかりに引っ張られながら、俺は浜辺を歩いて十分ほどのところにある岩場の崖にたどり着いた。サチエルとユミエルが俺のそんな様子をクスクスと笑いながら後ろからついて来る。
「ここだよ」
 そう言って小夜ちゃんが指さした先を見て、俺は一瞬ギョッとした。十数メートルの高さがある崖の上から下まで、その表面に巨大な彫刻が施されていたのが視界に飛び込んできたからだ。
 それは大昔の鎧をまとった兵士の姿に見えた。それがちょうど岩場に腰掛けている格好になっている。もし立ち上がったら身長30メートルぐらいの巨人だな。だが表面は波風に洗われて風化しているのか、輪郭がかなり崩れている。だが自然に出来た物にしては形が鎧武者の姿を見事に再現し過ぎている。やはり元は誰かが彫った巨大な彫刻なんだろうか?
 ふと気付くと、ユミエルが両手を胸の前で組んで祈るような格好で目を閉じて、何かを一心に念じていた。彼女が顔を上げて目を開くと同時にサチエルが尋ねる。
「どう?何か感じて?」
 ユミエルはやや首をかしげて答えた。
「何かは分かりません。ただ、何らかの気配はあります。わたしが今まで感じた事がない何かが」
「感じた事がない?ではわたくしたちの星の物ではないのね」
「はい。それは確かです。でも、では何なのかと言われると返事のしようがないのですが」
 俺はあっけにとられて思わず声をかけた。
「おい、君たちがついてきたのはユミエルのテレパシーで何かを調べるためだったのか?」
 ユミエルは照れ隠しにちょろっと舌を出して笑いながら答えた。
「あ、はい、すいません黙っていて。さっき桂木さんに、念のためにイケスカンダルの兵器か何かではないか、確かめて来て欲しいと頼まれまして」