俺はキャッキャ言いながら抱きついてくる小夜ちゃんに手を焼きながら、横から話に割って入った。
「あの、それで、小夜ちゃんの亡くなったお兄さんと俺って、そんなに似てるんですか?」
「はい、実の母親のわたしでさえ一瞬まさかと思ったほどで。この世にはそっくりな人間が三人はいるとか言いますけども、本当だったんですねえ」
 俺の腰のあたりに両手で巻きついている小夜ちゃんが下から俺の顔を見上げて突然言った。
「そうだ、兄様、魔神様を見せてあげる。兄様は昔から怖がってあそこに行った事なかったでしょ?」
 魔神様ねえ。どうせ伝説の類なんだろうけど、見てみたい気はする。桂木二尉の方に目を向けると二尉はすかさずこう言った。
「いいんじゃない?私はラミエルさんとあのタワーの分析をしてみるわ。あ、サチエルさんとユミエルさんも一緒に連れて行ってくれない?」
「はあ?なんでその二人を」
「まあ、いいから。ちょっと念のために確かめときたい事もあってね」
「俺は構いませんけど……小夜ちゃん、このお姉ちゃんたちも一緒に連れてってくれるかな?」
「うん!いいよ」
 と小夜ちゃんはうれしそうな声で元気いっぱいに答えた。小夜ちゃんのお母さんはいかにも申し訳なさそうな表情と口調で俺に言った。
「まことに申し訳ありませんが。あれが死んで以来、小夜がこんなにうれしそうな顔を見せたのは初めてで。ご迷惑でしょうが、どうか……」
 俺は精いっぱいの笑顔を見せてお母さんの言葉を遮った。
「いえ、とんでもない。こっちこそ、そんな珍しい物を見せていただけるなんて有難いですよ」